そして、遂に運命の日が訪れた。



「ヤマちゃん、もう少し大きく膨らませられない?こんなんじゃ壁に貼り付けた瞬間に萎んじゃうよ」


「いやいや、これが俺の限界なんですけど?」


「看護師さんに聞いて、空気ポンプ借りてこようか?」


「ううん、それは大丈夫」



3月10日、

さくらの17歳の誕生日。


揃って学校を欠席した僕達は、午前中からさくらが入院している大学病院を訪れていた。


それはもちろん、さくらの誕生日を祝い、彼女との最期の時間を共に過ごす為。


主治医からも今日か明日が山場だと言われている彼女は、僕達が病室に入った当初から眠り続けている。


さくらが目を覚ますかは分からないけれど、どちらにせよ、僕達の固い決心は揺らぐ事はない。


彼女の為に部屋を飾り付ける事にした僕達は、壁に貼る用の風船やら折り紙やら色々なものを持参して、エマの指図の下でテキパキと動き回っていた。


今は、顔を赤くさせながら風船を膨らませている大和がエマに注意されていて、僕が解決策を提示しようとしたら拒否されたところだ。



「とにかく、これとこれだけ膨らませて。1と7って風船をベッドの真上に貼れば完成だから」


普段は病室に入っただけで泣いてしまう程に涙腺が弱いエマは、今日は“サクちゃんの前では泣かない”と宣言して笑顔を保っていた。