例えば今日、世界から春が消えても。

さくらは興奮と嬉しさのあまり、手を震わせながら箱をゆっくりと開けた。


その箱の中でまばゆい光を放っていたのは、

「凄い綺麗…!」

小さな雫のモチーフがかたどられた、ゴールドのネックレスだった。


「この雫のモチーフ、エネルギーの象徴を意味してるんだって。…だから」


感動と幸福で目に涙を溜めたさくらとは対照的に、急に悲しみの感情がせり上がってきた僕の目尻にも熱いものが込み上げてくる。


「さくらが死ぬ日が決まってたとしても、その日までエネルギーを持っていて欲しいから」


僕のエネルギーも、このネックレスの中に入れておいたからね。

彼女みたいに人を笑わせる冗談が言いたかったのに、

「っ、…」

一瞬で顔を歪めたさくらは、わっと両手で顔を覆った。


「ううっ、冬真君酷い…今日は、絶対に泣かないって決めてたのに…!」


すぐに涙を拭いて恨めしそうにこちらを睨んでくる彼女は、まるで怖くない。


零れ落ちた涙を拭いながら謝ると、

「許す。…許すから、これ、付けて欲しいな」

彼女は、上目遣いでそう頼んできた。


いやいや、そんな可愛い顔で頼まれて誰が断るんだよ。

思わず笑ってしまった僕は頷き、彼女の手からネックレスを受け取った。



「…はい、出来た」


さくらの首は細くて長く、ネックレスがよく似合う。