瞬く間に2学期も終わり、12月25日のクリスマス。


秋も終盤に近づき、着実に寒くなってきた街に流れるのはクリスマスソング、綺麗に飾り付けられたクリスマスツリーの前で抱き締め合っているのは愛を誓った恋人達。


アウターを着たり、手を繋ぎながら幸せそうに歩く人々をちらちらと見掛けながら、僕はスマホに表示された地図を頼りにとある場所まで向かっていた。




12月、さくらは1度も学校に登校する事は無かった。


先生曰く、彼女の病態は日に日に悪化の一途を辿っているようで、もう長時間座る事も出来なくなってしまったらしい。


心配した僕達は、彼女の身体に悪い影響を与えないように気を付けながらビデオ電話をして連絡を取ってはいたものの、直接顔を見て話す機会は与えられなかった。



けれど、今日は違う。


「…駄目だ、本気で吐きそう」


さくらの言っていた“緑の屋根が目印の一軒家”まで辿り着いた僕は、極度の緊張のせいで震える手を胸に当て、ゆっくりと深呼吸をした。


何故なら、僕は今から初めて目の前にある家ーさくらの家ーにお邪魔する事になっているのだから。


事の発端は、大和のサッカーの試合を観戦しに行ったあの日だった。