「ああ、そういう事ね!もちろん良いよ」


僕とエマが静かに肩を震わせている事にまるで気付いていないさくらは、笑顔でボールとペンを受け取った。



真剣な顔で悶々と考え込み、ゆっくりとボールの側面にメッセージを書き込むさくらは、

まるで、自分の生命を1文字1文字に託しているようにも映った。



「これで良し」


少しして顔を上げたさくらは、にこにこと笑いながら大和にサッカーボールを手渡し、

「記念に、1枚写真撮らない?」

そう、提案した。


もちろん、反対する人なんて誰もいなくて。


「じゃあ、私のスマホで自撮り…誰か腕長い人いる?」


「エマの腕長いよね?何せ人間自撮り棒だし」


「止めてよフユちゃん、それ初めて言われたよ?」


わちゃわちゃと騒ぎながらもスマホを手にしたエマは、皆が画面に入るように誘導し。


「笑ってー!はい、チーズ!」


全員の溢れる笑顔を、1枚の写真に収めたんだ。







今日という日がとても濃い1日だったせいで、僕は、大好きなさくらの笑顔を隣で見られる事が当たり前だと勘違いをしてしまっていた。



けれど、現実はそう甘くなくて。


この日以降、さくらは学校を休む事が急激に増えていった。



彼女の病気は、彼女の願いが切れるまでのタイムリミットは、


着実に、進行していたんだ。