例えば今日、世界から春が消えても。

元から雪のように白かった肌は血色がなく、ふっくらとかわいらしかった頬はこけてしまっている。


入院して最先端の治療を受ければ病状は少しは良くなるはずなのに、

彼女は、年末までこのまま耐え抜きたいと本気で思っているんだ。


彼女の余命まで、残り4ヶ月を切っている。


毎日、確実に死に向かって歩みを進めている彼女の心の中には、抱えきれない程の恐怖が巣食っているはずなのに。


彼女からは、生きたいという強い炎が弱まる気配が感じられなくて。


さくらは誰よりも強く、誰よりも儚い。



「さくら、…大好きだよ」


前屈みになってさくらの耳に顔を近づけた僕は、彼女にしか聞こえない程の小さな声で囁いた。


僕の右手をぎゅっ、ぎゅっ、と握っていた彼女は、その言葉を聞いた数秒後にゆらりと首を回す。

薄い微笑みを称えた彼女の唇が、意図せずとも僕の頬に触れる。


「…知ってる。私もだもん」


彼女の大きな瞳からはまだ、生きる希望は失われていなかった。





大和が活躍しそうな時は教えるから、それまで眠ってても良いからね。


そう声掛けをした僕が、さくらに握られたままの右手でゆっくりと彼女の肩辺りをトントンし始めて、数分が経った。


たまにさくらの様子を見ながら試合を見ているけれど、彼女は横になりながらもしっかりと試合観戦をしているようで。