例えば今日、世界から春が消えても。

最初はゲームの解説でもしようかと思ったけれど、

「あ、ボール取られた!…うわ、キーパーさん止めた!やばい、これめっちゃ凄いよ」

さくらがあまりにも真剣に試合を観戦している上、たまに大和の勇姿を写真に収めているのを見た僕は口を慎んだ。


さくらは、この一瞬一瞬を文字通り目に焼き付けているんだ。


自分のやりたいことが叶った今、

「大和君も凄いけど、エマちゃんも格好良い…部活着を着ても美貌がそのままだなんて…」

口元に手を当て、感無量な様子で友の行動に感想を漏らしている彼女に、僕の解説は必要ない。


さくらが楽しんでいるのなら、願ったり叶ったりだ。


僕と左手を繋いだ状態のまま、前屈みになって大和の姿から片時も目を離さない彼女を見つめて微笑んだ僕は、そっと視線を校庭に流した。



煌めく汗を流しながらボールに飛び付く大和の姿は、彼女が言うように、普段の彼からは想像できない程の格好良さを含んでいた。




と、お互いに無言で試合を観戦し続けてしばらく経った。


今の大和達は相手側に先制を許していて、なかなか厳しい戦いになりそうだ。


前半戦が駄目でも、きっと彼らなら後半戦で持ち直してくれるはず。


元々は仲間として共に笑い合っていた部員の一挙手一投足を、固唾を飲んで見守っていると。


「…」


ポンッと、さくらの顔が自分の肩に乗せられたのを感じた。