例えば今日、世界から春が消えても。

スマホで実際のサッカー選手が活躍している様子を観ていた僕達は、グラウンドの方から聞こえてきた大声を聞いて目を見合わせ、

「エマちゃんの声だ!」

同時に声がした方を向いた。


「来てくれてありがとうー!」


「絶対勝ってやるよ!」


そこに居たのは、マネージャー専用の部活着を身につけた現役モデルと、11番の背番号が書かれたユニフォームを身に纏った少年の姿。


「頑張ってー、応援してるよー!」


2人の友の姿を視界に捉えた僕の彼女はその場に立ち上がり、彼らに負けない程の声量でエールを送って頭上で大きく手を振った。


冬真君も、と促されたから、僕も顔の前で小さく手を振る。


それを見た彼らは、遠くからでもはっきりと分かる程に満面の笑みを浮かべ、お互いに視線を合わせてハイタッチをすると、そのまま部員の元へと戻って行ってしまった。



「…凄いね、大和君が輝いてる。いつもと全然違う」


それからすぐ、ゲームの前半戦がスタートした。


今まで自分が所属していた部活の試合の様子を傍観する機会はなかったから、この体験は僕にとっても貴重なもので。


将来を期待されている大和が相手のパスを難なく遮断したり、味方が良いプレーが出来るように周りを見ながら走っている姿を見て、隣に座るさくらが感慨深げに呟いた。


「本当だね」