例えば今日、世界から春が消えても。

椅子に座ってふーっと息を吐いた彼女は、間髪入れずにそう尋ねてきたものの。


「いや、11人だよ」


かなり自信満々な顔で言い切ったところ申し訳ないけれど、その数は野球をやる時の人数だ。


思わず吹き出すと、

「いやっ、本当は私も知ってたんだよ!?サッカーは手を使っちゃいけなくて、んーと、アメリカ発祥?」

顔を赤らめた彼女は、あたふたしながらまたもや珍回答を連発させた。


「ううん、イギリス」


真面目くさった顔で誤答を言い続ける彼女が可愛くて、何だか照れくさくなる。


「最悪、全部外してるじゃん!えー、…駄目だ、何も思いつかない」


そんな僕の姿を見た彼女は地団駄を踏みつつ、恥ずかしそうに下を向いて笑みを零した。


「なら、少しだけ教えてあげるよ」


元々、僕が此処に誘われた理由は、”さくらにサッカーについて教えてあげる為”。


彼女に会える事が楽しみで本来の目的を忘れかけていた僕は、えへんと咳払いをして校庭の方を指さし、もったいぶった口調でサッカーのルールについて説明を始めた。





そうして僕達が話に花を咲かせていると、あっという間に試合の開始時刻が近づいてきて。


「サクちゃーん!フユちゃーん!」