僕とさくらが束の間の幸せを手にしたその日から、早くも1ヶ月が過ぎた。


僕達が付き合った事を2人に報告したところ、早速グループ通話が開始されて、

『良かったねサクちゃん、これこそが少女漫画の王道だよ!はあー羨ましい!おめでとう!』

『まあ、俺はこうなるだろうと思ってたけど』

声を張り上げて喜びを表現したエマと、何故かクールに話を終わらせた大和の2人から、祝福の言葉を貰う事が出来た。


誰も、さくらが来年の3月に亡くなってしまう事については触れなくて。


僕の決断が、僕達の関係が正しいものかどうかなんて分からないけれど、さくらが幸せだと笑ってくれる限り、僕も2人の友も幸せな事には変わりがなかった。



そうして僕達は、持ち前の明るさを取り戻したさくらと共に、至って平凡な日々を楽しんでいた。


ただ、その生活の中に、彼女がやりたいと願った些細な事を交えながら。



「大和君、寝てないで起きて。勉強しないと本当に赤点取っちゃうよ?…ほら、冬真君も言ってあげてよ」


「いや、もしかしたら寝不足だったのかも」


「そんなわけない、どうせ夜遅くまでサッカーの試合でも観戦してたんだよ」


10月中旬、『定期試験前に一緒に勉強をする』という願いを叶えるべく、僕達は放課後に教室に残って勉強をした。