例えば今日、世界から春が消えても。

「それって、どういう…」


大和の意味深な言葉に、僕は眉間に皺を寄せたものの。


「大丈夫だから。とにかく入るぞ」


「いや、ちょっ…!」


僕は、自分よりも筋肉質な大和の手に背中を押され、半ば強制的にカフェに入る事になってしまったんだ。



「どうしよう、全部美味しそう」


「俺はストロベリーケーキとチョコレートケーキ」


「私はチーズケーキね。フユちゃんは?」


「んー…僕もチーズケーキかな」


僕達が店内に入ると、すぐに4人がけのテーブル席に案内された。


窓側から僕、さくら、僕の正面に大和、その隣にエマの順で座った僕達は、荷物を置く事よりも先にメニューに飛びついた。


悩んでいる様子のさくらを除いた僕達は、来店2回目だからかすんなりと食べたいものを決める事が出来て。


「さくらは?どれにするか決めた?」


甘いものに目がない男女2人組を無視した僕は、腕を組んだままのさくらにそっと声を掛ける。


「うーん…」


さくらの小さくて細い手が、メニュー表に載せられた写真の上を滑っていく。


「…ごめん、私あんまりお腹空いてないから、アイスティーにするね」


でも、最終的に彼女が選んだのは、此処のカフェが自慢するケーキではなくてただの飲み物だった。