例えば今日、世界から春が消えても。

業を煮やした僕が先生に聞いても“分かりません”の一点張りで。


寝坊で遅刻かな、それとも休みかな、どうしたんだろう。


そのうち、僕達の抱いていた楽観的な考えは徐々に不安と心配へと塗り変わり。


会いたい、せめて声だけでも聞きたいのに、そのどれもが叶わない。


もしかしたら、…いや、そんなはずは。


頭の片隅で蠢く黒い考えに慌てて封をして、大丈夫だと自分に言い聞かせる。


と、無力な僕がそんな事を繰り返していた最中。




「久しぶりー。あれ、大和君黒くなった?エマちゃんも少し焼けた気がする」


2学期が始まってから実に2週間後、僕の想い人がようやく学校に姿を現したんだ。



「サクちゃん!どうしてこんなに休んでたの、体調悪かった?」


「ううん、違うよー」


その日、いつものように登校して教室へ入ろうとした僕は、

「え?」

実に2週間ぶりに聞くさくらの声を聞き、驚いて足を止めた。


さくら…?


ずっと会いたくて話したかった人が今、僕の目と鼻の先に座っている。


「家族旅行行ってたんだー。お土産は高くて買えなかったけど、許してね」


普段の笑顔でエマと大和に話し掛ける彼女はいつもと何ら変わりがなくて、

ただ、その姿は何処かもの寂しくて、いつもよりも小さく見えた。