戻り駅

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 一週間前に遡って三日目の朝が来ていた。


 今日は通常授業のある日だ。


 スマホのアラームで目を覚ました私は今日もまだ過去であることを思い出した。


 出そうになった欠伸が引っ込み、途端に気分が引き締まる。


 今日こそはなにかキッカケを掴むことができるかもしれない。過去に戻ってから毎日そう自分に言い聞かせ、常にアンテナを張っている状態だった。


 準備しておいた制服に着替えていると、スマホが朝のニュースを受信した音を立てた。


《優良銀行に強盗押し入る!》


 そんなタイトルと共に近所の銀行に銀行強盗が入ったことを知らせていた。そういえば一度目のときも同じ記事を読んだことがある。


その時も近くの銀行だったことがあり、食卓で両親と話題になったので覚えていた。


「ちょっと琴音、今朝のニュース見た?」


 ダイニングへ入るや否や母親がさっそく話しだした。


 いつもは新聞を広げている父親も、今日はスマホニュースを確認している。


「優良銀行の事件でしょ?」


「そうよ! もう、びっくりしちゃうわよね!」


 オーバーリアクションで話ながらも手際よく朝食の準備を進めている。


「銀行強盗なんて何年ぶりだろうな。お父さんが子供の頃に大きな事件があったんだぞ」


 父親は昔の事件をまるで自分の武勇伝のように語る。


 これを聞くのも二度目だった。


 確かに衝撃的な事件だったが、私は両親の会話を上の空で聞いていたのだった。