私は一瞬足元のスマホを見た。拾っている暇はない。
「やぁ、琴音ちゃん」
男の粘ついた声が自分の名前を呼んだその瞬間、私は弾かれたように走りだしていた。
「待て!!」
後ろから男の声が飛んでくる。だけど振り向く余裕はなかった。
振り向いて少しでも走る速度が遅くなれば殺されてしまう。
そんな恐怖で後ろを確認することもできない。もしあの車で追いかけてこられたら逃げ道はない。
走りながら今にも肩をつかまれるんじゃないか、後ろからひき殺されてしまうんじゃないかという恐怖に追い立てられる。
足がもつれそうになんとか踏みとどまり、息をするのも忘れて全力で走り、ついに大通りへ出た。
途端に人の行き来が増えてきてもすぐには止まることができず、私は何人かの通行人にぶつかりながらどうにか足を止めることができた。
行きかう人々が怪訝そうな表情をこちらへ向ける中、ひざに両手をついて全身で深呼吸をした。
頭からふき出した汗がコンクリートにしみを作っていく。
息を吸い込むたびに喉が乾燥して張り付きそうになる。どこかで少し休憩しないと。
そう思って体勢を直したときだった。
不意に後ろから肩を叩かれた。
私はビクリとはねて体が硬直してしまう。
まさか、追いつかれた……?
「やぁ、琴音ちゃん」
男の粘ついた声が自分の名前を呼んだその瞬間、私は弾かれたように走りだしていた。
「待て!!」
後ろから男の声が飛んでくる。だけど振り向く余裕はなかった。
振り向いて少しでも走る速度が遅くなれば殺されてしまう。
そんな恐怖で後ろを確認することもできない。もしあの車で追いかけてこられたら逃げ道はない。
走りながら今にも肩をつかまれるんじゃないか、後ろからひき殺されてしまうんじゃないかという恐怖に追い立てられる。
足がもつれそうになんとか踏みとどまり、息をするのも忘れて全力で走り、ついに大通りへ出た。
途端に人の行き来が増えてきてもすぐには止まることができず、私は何人かの通行人にぶつかりながらどうにか足を止めることができた。
行きかう人々が怪訝そうな表情をこちらへ向ける中、ひざに両手をついて全身で深呼吸をした。
頭からふき出した汗がコンクリートにしみを作っていく。
息を吸い込むたびに喉が乾燥して張り付きそうになる。どこかで少し休憩しないと。
そう思って体勢を直したときだった。
不意に後ろから肩を叩かれた。
私はビクリとはねて体が硬直してしまう。
まさか、追いつかれた……?



