五時間前と言えば十時三十分くらいの時間だ。そのくらい前ならまだ空き地に良治たちは来ていないかもしれない。


 それなら今から直接良治の家に行ってみたらどうだろう?


 あの男と接触する前に良治を説得することができれば、今日の計画をとめることができるかもしれない。


 だけどそれには問題が一つあった。


 私は良治の家がどこにあるか知らないのだ。一旦学校へ行って誰かに聞くとしても、怪しまれることは必須だ。


 これから人を殺そうとしている問題に誰かを引きずり込んでしまうかもしれない。そうすると、新たな被害者が生まれるかもしれないのだ。


 そう思うとなかなか決断することができないまま、問題の空き地へとやってきてしまっていた。


 空き地にはまだ車も良治の姿もなくてホッと胸を撫で下ろす。


 ここで少し考える時間がありそうだ。


 前回と同じように電信柱の影に隠れて待機していると、不意にスマホが震えてビクリと体を震わせた。


《美紗:ちょっと琴音、どこに行っちゃったの?》


 そのメッセージに私は学校のある方向の林へと視線を向けた。


 学校内の私はいつの間にかどこかへ来ていることになっている。


 私は少し考えてから返信を打ち込んだ。


《琴音:ちょっと体調が悪くなって、帰ることにした》


《美紗:え、大丈夫? っていうか鞄どうするつもり?》


《琴音:寝ていれば治ると思うから大丈夫。鞄は置いとく》