戻り駅

☆☆☆

　なにが起こっているのかわからなかった。


私はただ「やめて！」「車をとめて！」と、喉が枯れるほどに叫んでいた。


　けれど車はとまることなく蛇行運転を続けてついに学校前の横断歩道が見えてしまった。


横断歩道は青信号でちょうど美紗がわたりきったところだった。


　その直後誠が姿を現した。


「あいつだ！」


　良治が叫ぶ。


「やめて！！」


　運転手に手を伸ばそうとするが、隣から良治に邪魔をされて届かない。


　車は猛スピードで青信号の横断歩道へと突っ込んでいく。


　次の瞬間フロントガラス一杯に誠の姿が見えて、ほぼ同時にドンッと強い衝撃を受けた。


　悲鳴を上げ、反射的に頭を低くする。


　車は衝撃を受けても止まらず、何度もなにかを踏みつけるような感覚が私の体を貫いた。


　その後車は学校の門柱に激突して停車した。


　運転手の男がバッグにギアを入れるが、思ったように動かない。


　男は舌打ちをすると運転席から飛び出し、逃げ出した。その後を追いかける良治。


　私は呆然として血に染まったフロントガラスを見つめていたのだった。