戻り駅

 とにかく二人を止めることができればこちらの勝ちなのだと思い、車の前に立ちはだかった。


「なんでここに!?」


 良治が目を剥いているが、説明なんてする必要はない。


「誠との間になにがあったのか知らないけど、人殺しなんてやめて!」


「おい良治、この女写真で見たヤツか」


 男が眉間にシワを寄せて言う。


 どうやら私のことも知っているみたいで、一瞬気味の悪さを感じた。


 見ず知らずの男に無断で自分の写真を見せられていたことに嫌悪しながらも、今はそれをとがめている暇はなかった。


「あぁ。でも、なんでここにいるのかはわからない」


「話を聞かれちまっただろうが!」


「そんなこと言われても!」


 二人が言い合いを始めている隙に車のキーを盗むことができないかと思ったが、キーは男の手にしっかりと握り締められていた。


「おい、もう時間がないぞ!」


 男が叫ぶ。


 時間を確認してみるとすでに事故が起きる五分前になっていた。このまま時間稼ぎをすればどうにか事故を止めることができるかもしれない。


 私は車の前に立ちはだかったまま二人をにらみつけた。絶対にここから動いてやるもんかと重心を落とす。