戻り駅

「誠が学校から出てきたら、俺が歩道橋の上から合図する」


　どうやら二人は別々で行動をするみたいだ。


　私は歩道橋を渡ったときに逆側から急いで逃げていく男の姿を見たことを思い出していた。あれは良治だったのだ。


　最初の計画に失敗した二人だったが、良治に指示があったからこそ私の家までついてくることができ、そこで計画を実行していたのだ。


　でも、どうして良治が誠を殺そうとする必要があるのだろう？


　会話を聞いていてもこれから引き起こす事故のことばかりで、全く検討もつかない。


　そうしている間に時間は刻一刻と過ぎていく。


「そろそろ行くか」


　浅黒い顔の男が腕時計を確認して運転席のドアを開ける。


「あぁ」


　良治がうなづいて後部座席へ向かう。それを見た瞬間体が勝手に動いていた。


電信柱の影から飛び出して「ダメ！！」と叫ぶ。その声に驚いて良治が振り向いた。


　もう一人の男も何事からこちらへ体を向ける。


「バカなことはやめて！」


　こうなったらやけくそだ。