戻り駅

 後部座席から出てきたのは今日学校を休んでいるクラスメートの大辻良治だったのだ。


心臓が早鐘のようにうち始めて頭の中は真っ白になる。体の毛穴という毛穴から汗が噴出してきて止まらないのに、全身の血の気が引いて寒さすら幹事始めていた。


 それでもここで逃げ帰ったら意味がない。


そんなことをすればまた交通事故は引き起こされることになってしまう。


 誠を助けられるのは私だけなんだから!


 電信柱に隠れたままで、私は二人の会話に耳をそばだてる。


「いつ頃学校が終わる?」


 その野太い声は浅黒い顔をしたあの男のものだ。


 野太く粘つくような声色に背筋がゾワリと寒くなる。


「三時三十分」


 良治が短く返事をする。


 この声も様子を見ても、風邪を引いているようにはみえなかった。


「相手はすぐに学校から出てくるのか?」


「あぁ。誠は部活はしてないからすぐに出てくるはずだ。もし失敗してもあいつの家を知っているからチャンスはまだある」


 良治の言葉を信じられない気持ちで聞く。


 どう見ても良治と運転手の男は仲間だった。そして誠の命を狙っている。


「その誠ってやつは出てきたらすぐにわかるのか」