戻り駅

☆☆☆

 一一時三十分。


 駅の周辺のお店には主婦だと思われる女性の姿が多かった。買い物袋を提げていたり、レストランに入っていったりしている。


 学校に到着すると四時間目の授業が行われる最中だった。私は教室の後方のドアを開けて堂々と中へ入っていく。


 その姿にクラスメートも先生も少し驚いたように目を丸くしていた。


 私は気にせず真っ直ぐに誠の席へと向かう。


もう、二度も三度も同じ授業を受ける気はなかった。


 それに誠のそばにいても事故は引き起こされる。それなら、別の方法で今回の事故に焦点を当てていくつもりだった。


「誠、最近何か変わったことはなかった?」


突然質問された誠は一瞬言葉を失ったが、真剣な表情をしている私を見て「とくにないけど」と、笑わずに答えてくれた。


 誠が言っていることが本当だとすれば、本人の気がつかないところでなにかトラブルに巻き込まれていたことになる。


私は一度うなづくと教卓の前に立っている化学の先生へ向けて「今日は早退します」と、つげ、廊下へ出た。


 教室の中から先生の声とクラスメートたちの声が聞こえてくるけれど、立ち止まるつもりはなかった。


 鞄も持たずに大またで廊下を歩き、階段に差し掛かると走りだした。


 私はあの白い車のナンバーを覚えていた。