戻り駅

「あぁ」


 誠は一旦立ち止まり、片手を上げて挨拶をする。そしてまた歩き出そうと足を踏み出したそのときだった。


 細い路地を走ってくる白い車に気がついた。


誠が道を開けるために横へよける。


 途端に白い車がスピードを上げたように見えた。


 え?


 疑問を抱いた次の瞬間、白い車は猛スピードで誠の体に激突していたのだ。誠は車に押されてブロック塀にぶつかり、もろくなっていた民家の塀は音を立てて崩れ落ちた。誠の体は塀と車の間に挟まれ、更にタイヤにのし上がられる。


 白い車はバックしたかと思うと間髪いれずに急発進して逃げ出した。


 私は唖然としてその光景を見ていた。


 時間にして二分と経っていない。


 その間に誠の体は腹部から真っ二つに切断されてしまっていたのだ。


 騒音を聞きつけた近所の人たちが飛び出してきて、血まみれで倒れている誠を見て悲鳴を上げる。すぐに家にかけこんで救急車へ電話をかける人もいる。


 そんな中、私は立っている力すら失ってズルズルとその場に座り込んだしまったのだった。