戻り駅

「あぁ、そんな話もしてたな」


「その駅が本当にあったらどうする?」


 私の質問に誠は真剣な表情で考え込んだ。


「どうするって言われてもなぁ。俺、今の自分に結構満足してるし、別に使おうとは思わないかな」


「そっか、そうだよね」


 私は何度も頷く。


 私もつい数時間前まではそう思っていた。自分には関係なことだと、満足しているからと思っていた。


 だけど状況は一変している。


 私にはあの駅がないとダメになってしまっているのだ。


「たとえばさ……」


「なに?」


「たとえば……」


 私が死んだら、その死が回避できるものだったとしたら、駅の存在を信じたくなる?そう質問しようとしたけれど、やっぱり言葉にならなかった。


 こんなことを聞いてどうしようというんだろう。誠を余計に心配させるだけじゃないか。そう思った私はなにも言えなくなってしまった。


 とにかく今回は大丈夫そうなのだ。もう心配することはない。


 自分にそう言い聞かせて「なんでもない」と、笑顔を浮かべる。


「変なやつ。じゃあ、またな」


「うん……気をつけて帰ってね」


 背を向ける誠に声をかける。