戻り駅

☆☆☆

「それじゃ、私はこっちだから」


 しばらく一緒の道を歩いていた美紗が三叉路に差し掛かったときそう言って足を止めた。


「ひとりで大丈夫?」


 思わずそんな質問をしてしまい、美紗が笑い出した。


「そんなの当たり前でしょう? 私幼稚園児じゃないんだから」


「うん、そうだけど……」


 それでも美紗と離れてしまうことが不安で、思わずその手を握り締めていた。


「本当に、どうしたの?」


 美紗は今度は驚いた表情で私の顔を覗き込む。


 相当変な顔をしてしまっていたようで、とたんに美紗は噴出した。


「ちょっとやめてよ変顔するのは。じゃ、二人ともまた明日ね」


 美紗は元気良く右手を振って歩き出す。


 これ以上引き止めることはできなくて、私はその手に振りかえした。


「家まで送っていくよ」


「ううん。今日は私が誠を家まで送っていくよ」


「は? なに言ってんだよ。俺の家までは遠いぞ」


「わかってる。でも送っていく」