二時間前駅で下車しても、周囲の光景はなにも変わらなかった。


「ありがとう」


 振り向いて汽車の中にいる六人の精霊に霊を言うと、それぞれが手を振ったり頭を下げたりして挨拶をしてくれた。


 私は後ろで汽車が発車する音を聞きながら二時間前駅の通り抜けた。


 瞬間、喧騒が戻った。


 すり向いた膝の痛みは消えて、まばらに人が通り過ぎていく。


 スマホを確認してみると、一時四十分になっている。


 一時間前駅で下車したときよりも更に人の数は少なくて、待っているタクシーは一台しかない。


 そんな光景を横目で確認し、早足で学校へ向かう。


 今は五時間目の授業の最中のはずだ。


 廊下にはひと気がなく教室内からは先生の説明する声だけが聞こえてくる。


 二階の二年C組へ向かい、後ろのドアを開いた。途端にクラスメートと先生からの視線が突き刺さる。


「ごめんなさい、遅刻しました」


 息を切らして言うと、国語の授業をしていた男の先生は仕方ないなという雰囲気で頷いて見せた。


「ちょっとどこ行ってたの?」


 席へ向かう途中で美紗が声をかけてきたので、私は曖昧に笑ってみせた。


 今回も私は途中でどこかへ消えてしまったことになっているみたいだ。


 自分の席に座り、さっきと同じようにクラス内を見回して見ると誠と視線がぶつかった。


 誠は軽く肩をすくめている。


 私はそれに対しても苦笑いで返した。


 二度目の授業を聞き流しながら必死に頭を働かせる。


 どうすればいいんだろう。


 どうしたら、二人を助けることができるんだろうかと……。