戻り駅

 誠の言葉に私は小さく笑ってうなづいたそして二人同時にわざとこけてみる。


 少しの痛みは感じたけれど、勢いが付いていなかったからか傷ができることはなかった。


 目の前に迫るコンクリートの地面。


 そしてクスクスと聞こえてくる周囲の笑い声。


 それらはいつまでたっても砂と静寂に代わることはなくて、隣で誠が勢いよく立ち上がった。


 そして私の前に手を差し出してくる。私はその手を取り、立ち上がった。


 目の前にはさっきまでと変わらない駅の風景が広がっていて、数人の学生たちがこちらを見て笑っていた。


「俺たちにはもう戻り駅は必要ないみたいだな」


「……そうだね」


 私たちは顔を見合わせて少し笑い合い、駅に背を向けて歩き出したのだった。


END