戻り駅

その途端脳裏に優良銀行で起こった強盗事件のニュースがよみがえってくる。


 見たことのないその現場に誠と療治と、運転手の男の三人がいる光景が浮かんできた。


「でも俺は断った。そんなバイトできるわけがない。幸いだったのは、良治がまだちゃんとバイトをすると返事をしていなかったことだった」


「良治はそのバイトを断ることができたの?」


 私の質問に誠はうなづいた。


「あぁ。毎日良治の家に行ってバイトを断るように説得したよ。銀行強盗なんてそんなこと――」


 そこまで言ってしまい、誠がハッとした顔を向けた。私は一瞬息を飲んだけれど、しっかりとうなづいてみせた。


 消えた記憶が断片的によみがえってくるのを感じる。


 白い車と空き地と良治。


 運転手と土下座している誠。


 あのとき誠は私を助けるために土下座してくれていたのだっけ。


「でもまだ不安はあったんだ。今回はやめてもまた同じことに興味を抱くかもしれない。それじゃ止めた意味がないだろ?」


「そうだね」


 私はうなづく。