戻り駅

「どうしてそれを!?」


「私も、乗ったことがある。何度も、何度も」


 思い出すと目の奥が暑くなってきて涙で視界がボヤけてしまった。


「そんな、まさかそれって、俺のため?」


 私は無言でうなづいた。目にたまった涙が零れ落ちて膝に落ちた。


「ごめん琴音、俺そのこと知らなくて」


 誠が私を抱きしめてくれる。その確かなぬくもりに涙なんて引っ込んでしまう。


 今ここに誠がいる。


 生きている。


 それだけで十分だった。


「大丈夫。ごめん、話を続けて」


「あぁ。俺は汽車に乗って一ヶ月前に戻ったんだ」


「一ヶ月前?」


「そう。琴音が死んだのはその……良治が関係していたから。一ヶ月前に良治から送られてきたメールを思い出したんだ」


 良治……。


 なにか大切なことを思い出せそうになったとき、後頭部がひどく痛んで顔をしかめた。