「……ああ、ありがとう花霞」

 先生の辛そうな顔を見ていると、なんだかこっちまで辛くなる気がする。

「先生、偏頭痛はずっと前からですか?」

 そう問いかけると、先生は「若い時から、ずっとだ……」と答える。

「今脳神経外科の先生呼んできますので、ゆっくり休んでてくださいね」

 頷いた先生の顔を見てから、脳神経外科にコンサルを入れる。

「お疲れ様です、救命の志倉です。すみません、三十代の男性なのですが、偏頭痛の症状を起こし搬送されてきた患者さんがいるので、診ていただきたいのですが」

「分かりました。すぐ向かわせます」

「お願いします」

 脳神経外科にコンサルを頼み、先生にそう伝える。

「先生、今脳神経外科の先生が来てくれるので、ちょっと待っててくださいね」

「ああ……ありがとう」

 脳神経外科に綾浜先生の処置をお願いし、別の患者さんの処置を開始する。

「諸角先生、どんな感じですか?」

「意識がぼーっとしてる。瞳孔不動もあるし、念の為CT取ったほうがいいかも」

「了解。空いてるか聞いてみる」

「お願い」
  
 私たち救命の一日は長い。患者さんはいつも迅速に対応しなければならないから。