「ジェレミー! や、やめろ……」
「さっきマティアスが来たから全部聞いておいたんだ! その鉢植えはムーンライトフラワーの苗。レオはその花が咲くのをコレットと一緒に見たいんだって。ほら、恋の伝説かなんかがあるんだろ? 話は以上だ!」


 殿下はお兄様が去った後の扉に張り付いて、扉で爪を研いでいます。


「あの、殿下」
「……自分で言いたかった」
「はあ」
「順番ぐちゃぐちゃになったけど、もう一回言わせてくれ」


 殿下は私の方に近づいて、乱暴に私の両手を取ります。以前なら、「もしかしてお縄を頂戴?!」って思ったかもしれませんが、殿下の顔が優しいので何だかペースが狂います。


「ジェレミーに先に言われたが……俺は、初めて会った時からお前のこと悪くないなって……いや、可愛い。可愛すぎると思ってた! お前はエリオットの事好きだったし、なんか色々あってお前の事好きだったのに変な態度取ってた」


 ちょっと待ってください、殿下!
 爪を研ぐと別人に変身する呪いをかけられてます?


「コレット! 好きだ! 大好きだ! いや、これは愛だ、愛してる!」


 キモッ……!
 やめてやめて離してぇー!
 つかまれた両手を必死で引っ張っても、全然びくともしないんですけど!


「殿下! やめてください! 私はそう言うのはちょっと……」
「これだけ酷いことをしてきたんだから、すぐに受け入れてもらえないのは分かってる。時間をかけて少しずつでいい。そんな事をしている間にムーンライトフラワーが咲くから、それを一緒に見て囲い込みを……」
「ひぃぃっ! 殿下! ヒロインはどうするんですか! メイ様が王太子ルートを選ぶかも!」
「心配しなくていい。訳あってヒロインを無下にはできないから、そこは我慢して欲しいが、俺の心はコレットのものだ」


 ……いらんっ! 心、いらんっ!! 間に合ってますーっ!