殿下は私から手を離し、テーブルに肘をついてため息をつきました。


「コレット……何かが壊滅的にすれ違っている気がする。俺が言いたいことは、これまでについての謝罪。伝わってる?」
「ええ、そういうパターンだって事は理解しているつもりですけれど……」


 殿下、相当深刻なお財布事情がありそうですね。私の質問にも答えてくれないですし。


「じゃあ俺の気持ちは伝わったとして、次の話していいか?」
「はい、第二章ですね。どうぞ」


 次の話題に移ってしまいましたね。あ! 質疑応答は最後にまとめて下さいって言うやつでしょうか。とても効率的で良いと思います。でもこういう時って、質問しようとしてた事を忘れがちなんですよね。ちゃんと覚えておかなきゃ。慰謝料総額、慰謝料総額……


「あの鉢植え、何だと思う?」


 第二章は、殿下が宅配してくれた鉢植えの話ですか。入学祝いとして頂いたものです。いつまで経っても花が咲かないから、ただの盆栽なのかなって思い始めていたんでした。盆栽って意外と高値で取引されるんですよね。はっ、まさか……


「殿下、あの鉢植えは、まさか……手付金?」
「……うわあぁぁぁっ! 全然伝わらねぇっ!!」


 殿下が頭を抱えて悶え始めたその時、扉がガチャリと開いて、ジェレミーお兄様が入ってきました。


「話終わって……なさそうだな! どうせ二人がすれ違ってると思ったから助けに来た!」


 相変わらずお兄様のスピード感は独特です。


「コレット。つまりレオが言いたい事を通訳すると、今までコレットに冷たくしていたのはコレットの事が大好きな気持ちを拗らせてただけだ、すまん! って事だ!」


 なるほど! それなら分かりやすいです! ……へ? 私の事が大好き?