「殿下。いや、レオ。円卓会議なのだから、全員対等な立場で話すってことでいいよな? お前、抜け駆けしてコレットに告白しようとしているが、俺だって子供の頃からずっとコレットが好きなんだ!」
 マティアスまで声を荒げる。え? ちょ、お前コレットのこと好きなの? しかも俺、一応王太子だぞ。いくら円卓会議とは言え、一度に態度が砕け過ぎだよ!


「まあまあ、マティアス。流石にそれはダメだよ。仮にもコレットはレオの婚約者なんだから」
 ジョージ、止めてくれてありがとう。お前も可愛いヤツだな。

「ジョージ、お前にも言いたいことがある」
 アランの矛先は、ジョージに向く。

「お前、実は一人だけ、出会いイベントをちゃっかり回避してるだろ! ヒロインが水をかぶった後、裏庭を通って更衣室に行くはずだった。お前は裏庭で待機する予定だったのに、とんずらしたそうだな!」
「チッ……バレたか」
「バレたか、じゃないだろ! せっかく俺がエリオットが水に濡れたヒロインを見かけないように、リフレッシュスペースで足留めしておいたのに」
「リフレッシュスペースで?!」

 急にマティアスが、リフレッシュスペースというワードに食いつく。おいおい、なんでみんなそんなに戦闘体制なんだよ!

 マティアスは涙声で言う。


「エリオットをリフレッシュスペースに連れて行ったのはアランなのか? お前のせいでリンゼイは、エリオットの餌食に……うぅぁぁああああっ!」


 おいおい、マティアスは大声で泣き始めたぞ。やっぱり、大事な妹が水びたしにされているかと思うと、耐えられないんだろう。その気持ちは分かる。


「つまり、ヒロインのことはみんなで痛み分けだ。レオだけ一人逃げようだなんて許せない。王太子だからって、一人で勝手に決めるなよ!」

「アランお前ッ……! 大体な、対等な立場で喋っていいと許可を出すのは、身分の高い者からのはずだろう! お前たちから勝手に失礼な言葉を使い始めやがって!」

「ほら! いつもキラキラして猫かぶってたけど、レオだってそっちが本性なんだろ?」

「うるせぇっ! とにかく、王太子ルートは廃止だ!」



 ……第一回円卓会議は、大失敗だった。