エリオットとの出会いは避けた方が良いに決まっているが、ゲームシナリオの強制力がどれくらいあるのかが未知数な今、下手に避けて失敗するのも怖い。ゲームの強制力を確かめるために、まずは王太子ルートの出会いイベントで、シナリオからちょっと外れた行動を取ってみようと思った。エリオットとの出会いを避けるかどうかの判断は、それからだと。

 エリオット以外の三人には、予めこのゲームのことを伝えて協力を仰ごう。友人からの人望も厚いこの俺に、協力してくれないはずがない。俺を含めて四人のルートのどれかに引っかかりさえすれば、その後のヒロインの扱いなんてどうにでもなる。

 俺の意思だけでどうにもならなかった時や、万が一エリオットルートに入ってしまった時のことを考えて、この国の法律も変えておこうと思った。

 今の法律は、国王陛下の決定の前には無力。そもそも世襲制のこの国で、優秀な人材が国王になるとは限らない。国王の決定が常に最善なんてことはあり得ないのだ。法律を整えて、民を守るのが筋だろう。

 それで俺は先進的な法治国家である隣国に二年間留学して、法律を学んだ。


 話を元に戻そう。

 王太子ルートにおいて、ヒロインと俺が迷い込んだ森で見つけるムーンライトフラワー。夏至の日に一日だけ花を咲かせるというムーンライトフラワーを一緒に見た恋人同士は、必ず結ばれるという伝説がある。
 ゲームのタイトル『ムーンライト・プリンセス』から考えて、その伝説になぞらえたストーリー展開になっているはずだ。

 間違ってもこのムーンライトフラワーをヒロインと二人きりで見つけるなんて御免だと思った。ゲームの強制力がいかほどのものかの確認もかねて、ムーンライトフラワーを先に見つけ出して別の場所に移動させておくことにした。マティアスに調べさせて、見つかった苗を鉢植えにしてもらった。

 なぜだかコレットもコレットで、マティアスにムーンライトフラワーのことを調べさせていたらしいが。

 ヒロインとの出会いイベントにはコレットも同行させた。ムーンライトフラワーは鉢植えにして森から離しておいたが、ゲームの強制力でその鉢植えの場所まで誘導されてしまっては元も子もない。
 コレットも近くにいれば、万が一の時にも俺とコレットで一緒にムーンライトフラワーを見られる。そのためにわざわざ出会いイベントに同行させた。

 ちなみにシナリオを外れても、今のところは目立った問題は起こっていない。