「コレット様!」

 世界一面倒な人がやって来ました。もちろん、メイ・レーマン伯爵令嬢です。

「メイ様、何かご用事でも?」

 殿下と腕を組んでどこかに行くんじゃなかったの? こっちは気にしていないのに、わざわざ様子伺いに来るのやめてくれるかしら。
 メイ様は勝ち誇ったような顔をして、生徒会室の椅子に座りました。


「ごめんなさいね、今日私がレオを独占しちゃったから、コレット様が驚かれたんじゃないかって。心配して来たんです」


 ふん……。
 私が悲しんでいるとでも思いましたか?
 殿下がこの乙女ゲームを満喫していて、貴女に攻略されるのを楽しみにしていることなんて、とっくの昔に知っていますよ。
 そもそも私としては、あなたに王太子ルートを選んで欲しいんですから。私の望み通りの展開なのです。


「別に、気にしていただかなくて結構よ。ご自由になさってください」
「あら……やっぱりそうなんだ。レオとコレット様って、親同士が決めた婚約者同士ですもんね。ほら、レオって今すごく忙しいじゃないですか。普通の婚約者なら、近くで支えてあげたいって思うのは当然だと思ったのに、コレット様ったら全然レオに興味なさそう」


 ピンクの頭をフリフリして可愛らしく言うけれど、だんだんイライラしてきました。殿下が忙しいのに興味がなさそうですって? 興味なんかなくたって、あの方からの仕事はいくらでも降って来るし、私ほど殿下のために働いてる手下はいなくってよ?

 悪役令嬢の血が沸々と湧いてきますね。ケンカする? 無視する? いなす?

 どの選択肢にしようかしら。

 迷っていると、メイ様が立ち上がって近づいて来ます。