「コレット、今日はありがとう! 後は僕がやっておくから大丈夫だよ。もうすぐ暗くなるから、またね」


 エリオット様との貴重な時間は、あっという間に終わってしまいました。このままお別れしたら、また何も起こらないまま日々が過ぎていくだけです。何か言わないと。えっと、どうしようか。


「……エリオット様は、どなたか恋人はいらっしゃるのですか?!」


 うわーっ! 聞いてしまいました! 今の私、顔が真っ赤だと思います。聞きたいような聞きたくないような、何で私こんな質問しちゃったの!
 エリオット様はきょとんとしていましたが、私の頭をポンポンして、笑いながら答えてくれます。


「どうしたの? レオとケンカでもした? ダメだよ、自分の痴話ゲンカを他の男に相談しちゃ」


 何だかごまかされた……。
 そして、私の婚約者はレオナルド殿下だということをあえて強調されました。鈍い私でも分かります。これは、フラれたということですよね? どなたか恋愛に詳しい方いらっしゃいますか? おーい。


「ありがとうございます。お先に失礼します」


 私も婚約者がいる身でありながら、他の人に心揺らして最低ですね。あ、そんなこと言ったら殿下なんてもっと最低ですけどね。

 前世で何度もエリオット様ルートを選択してゲームをやり込むくらい、エリオット様のことが好きでした。でもこの世界に転生して、前世を思い出した七歳の子供の時から気づいていました。

 エリオット様は、私のことを全く見ていないということ。

 少し落ち込んで、また元気なコレットに戻りましょう。悪役令嬢は失恋くらいではへこたれないのです!