レオ様が誰かを呪うなんて、絶対何か理由があるに決まってる。ああ、どうして私はレオ様の変化に気付けなかったのかしら。

 ジョージに必要な書類を渡してから、私は藁人形と五寸釘を持って執務室を出た。

 これからどうしよう……。
 メイにも相談してみようか。
 メイに話したり、一晩寝て頭の整理をしてみたけれど、やっぱりどう考えても丑の刻参りの道具にしか思えない。
 何もせずに時間だけが過ぎていく。

 今は、まずルイーズの身の安全の確保が先決よね。予告もなしに申し訳ないけど、リンゼイのところに行ってみようか。
 そうよね、私にできることをやりましょう!

 そうと決まれば、馬車で悠長に向かってる場合じゃないし、私は自分で馬に乗るわよ。実は子供の頃に乗った馬が暴走してから、一人で乗るのは少し怖いの。だけど、そんなこと言っている場合じゃない。
 とりあえず、ちょうどその辺にいたアランを引き連れてリンゼイのところへ急ぎましょう。

 レオ様の呪いのメモには確かに『ルイーズ・スペンサー』と書いてあったけど、まだ消し込みはされていなかった。藁人形と五寸釘は私が持っているから大丈夫だとは思うのだけど、レオ様が複数所有している可能性もあるわよね。

 とにかくルイーズの無事を確かめなくちゃ。レオ様がこれ以上、変なことに手を染めることにならないように、私が守るのよ!


「リンゼイ! ルイーズは無事?!」


 突然スペンサー邸に飛び込んだ私に、使用人の皆様が驚いているわね。本当にごめんなさい、リンゼイを呼んできて頂戴。
 しばらくして二階から降りてきたのは、少し疲れた顔をしたリンゼイ。


「……あら、コレット! 突然どうしたの?」


 私がこんなに焦っているのに、リンゼイは落ち着いていて、階段を一歩ずつゆっくり降りてくる。
 随分余裕だけれど、ルイーズには何事もないのかしら。


「ねえ、ルイーズは? ルイーズはどこ?」
「ごめんなさい、ルイーズはちょっと体調が悪くて。二階の部屋にいるのだけど……」


 ……ルイーズの体調が悪いですって?
 階段の上に目をやると、使用人たちがバタバタと廊下を行き来しているのが見える。そして、うっすら聞こえるこの声は……ルイーズが大泣きしているじゃないの!