……これ、間違いないわよ。


 この藁人形に釘を刺して、このリストに書かれた人を順番に呪ってるわよね。


 一国の王太子が、こんな古典的な方法で他人を呪うなんて。スキャンダルもスキャンダル。絶対にこの情報を漏らしてはいけないわ。

 そして、それよりも気になること。

 ……レオ様、どうして他人に呪いなんかかけちゃったのよ。

 ストレス溜まってた?
 何かに悩んでる?
 追い詰められるような事件でもあった?

 せっかく結婚してレオ様のこんな近くにいたにも関わらず、レオ様の心の闇に気付いてあげられなかったなんて。

 私ったら王太子妃失格ね。

 以前の私なら、ここでこの藁人形と五寸釘を持って、レオ様の元からひっそりと去ったかもしれない。悪役令嬢として、代わりに罪を被ろうとしたかもしれない。
 でも、私は今や一皮むけてヒロインになったのだから簡単に諦めないわ。
 呪いを解いた上で、レオ様を心の闇から救う。ヒロインならそれくらいはやってのけなきゃ。

 私は意を決して、引き出しに入っていた五寸釘と人形を取り出した。

 ……うわっ! 触れるだけで、邪気が私に取り憑いたようだわ。胸が苦しい……!

 そして最後は、びっしりと人の名前が書かれたメモを手にする。
 上から順に消し込まれた名前。次の呪いの標的は。


 ルイーズ・スペンサー


 私の大切な親友の娘、ルイーズ。絶対に助けるわ。私に任せておいて!