「いやあ……それにしても、初対面で殿下に対してあんなに失礼な態度を取ったにも関わらず、殿下がすぐにコレットと婚約したいと仰ったのにはびっくりしましたな」


 ……む?


「そうですわね。会ったその日にガツガツと……私たちの部屋まで押しかけて、俺は絶対にコレットと婚約するから! と恐ろしい目で仰って。九歳でここまでの威圧感を出せるなんてと、私たち夫婦も驚愕していたんですよ」
「い、いや……ちょっと待ってください……」


 おい、俺がコレットに一目ぼれしたのは確かだが、国王陛下の目の前でバラさないでくれ。コレットもニヤニヤしているじゃないか。


「確かに、コレットの馬が暴走した時なんて、この世の終わりみたいな顔をして追いかけて行ったな。会って数日であの惚れこみようはすごかった。しかもコレットはあの時七歳の子供だぞ。何をそんなに惚れるポイントが……」


 ジェレミーまで援護射撃か……やめてくれ。
 しかも俺はその後、コレットへの片思いの気持ちをとんでもなく拗らせたんだぞ。今自分で思い出してもゾッとするんだから。
 ほら見ろ、母上までが俺のことを憐みの目で見ている。


「レオナルド……あなた、本当に大丈夫なの?」
「な……何がですか?」
「だってあなた達、まだなんでしょ? つまり今日は初夜でしょ?」


 ……!!


「十三年間のコレットへの気持ちが重すぎて、本当に心配だわ。コレット、気をつけてね」
「へっ? 何に気をつければよろしいのでしょうか……?」


 ……ああ……本当にやめてくれ……泡を吹いて気絶したい。