エドワードの誕生から四カ月。本格的な冬がやって来た。
 今日は、俺とコレットの結婚披露パーティー。


「レオ様! ドレスをありがとうございました。今日だけしか着られないなんてもったいないわ。すごく気に入ってしまって……」


 ……天使がいるんだが。俺の目の前に。
 コレットのこだわりで、ウェディングドレスは白であつらえた。胸元は深く、肩まで開いたデザイン。袖には豪華なレースがあしらわれている純白のドレスだ。髪には雪のような白い小花とヴェールを。

 もう一回言おう。
 天使か。
 そうでなければ、どこのおとぎ話から出てきたお姫様だろうか。

 みんな見てくれ! これが俺の……妻。
 大丈夫かな、俺。鼻血出てないか?

 招待客にコレットを見せびらかしたいような誰にも見せたくないような複雑な気持ちで目まいがして、その場にしゃがみこむ情けない俺。
 コレットに心配をかけながらも、半年ぶりの大規模な夜会に集まった国内外の招待客たちとは無事挨拶を済ませた。

 これでコレットも、名実ともに王太子妃だ。

 リード公爵夫妻と、コレットの兄のジェレミーも、王太子妃としての門出を喜んでくれている。


「今だから申し上げるのですが……」


 リード公爵夫人が口を開く。ん? 何か過去のことを掘り返す気なのか? 嫌な予感しかしないぞ。


「実はコレットをどうしても殿下の婚約者にと推したくて、あの時無理矢理に殿下をご招待したんですのよ……その節は申し訳ございませんでした」


 『あの時』というのは、コレットと初めて会った時のことか。そう言えば休暇で別邸に行く途中に、スペンサー領に寄ってくれと無理矢理に足止めされたんだったな。
 うん、でも許す。七歳のコレットもめちゃくちゃ可愛かった。逆に招待してくれてありがとう。

 リード公爵が続ける。


「兄のジェレミーは小さい時から優秀だったのに、コレットはどこか抜けてたからなあ。初対面で殿下に失礼なことをたくさん申し上げるような、礼儀のなっていない子でした。申し訳ございません」
「ちょっと……! お父様、お母様! 一応今日はおめでたい席なのに、ヒドイ事ばかり言わないで」


 コレットが慌ててリード公爵の口を手でふさぐ。コレット、それ可愛いから俺にもやってくれよ。
 リード家でのコレットの扱いはヒドイな。変なエピソードしか出てこない。でもいいんだ。ちょっと抜けているのも、コレットの可愛いところなんだから。