……おい、俺!

 それはさすがに虫が良すぎるだろ。

 コレットが『急に結婚なんて、心の準備ができていない!』と散々言っていたが、こっちだってできていなかったよ。コレットとの話も一通り終わってしまったし、これからどうするんだ俺。

 部屋には二人きり。俺がここに来る前に空いてる使用人をかき集めてコレットの着替えの手伝いもさせたから、なんだか色々と準備が終わっている。

 しかも俺、ちょっとプロポーズ頑張ったから、いい雰囲気。


 ……。

 え? いいのか?

 もしかして……いいのか?!



「えー、あー、コレット」
「はい、レオ様」
「何だか今日は疲れたな」
「そうですね。パーティーにも出たし、神殿にも行ったし、大変な一日でした。レオ様も連日の公務でお疲れでしょう?」


 そう言って、なぜかコレットは両手で自分の顔を隠し、少し下を向いて恥ずかしそうにしている。指の間から可愛く上目遣いで見ないでくれよ。コレット、もしかしてお前……期待してる?


 やっぱり……いいのか?!



 ……いやいやいや、それはダメだろ!

 そもそも結婚したのだって当初の予定には無かったし、それはさすがに……。

 でも、もしコレットが本当に初夜を期待してたらどうする? このまま何もなく終わったら、また俺嫌われない?

 とりあえず、まずはコレットの質問に答えなければ。


「疲れたかと言われたら……そうだな。ちょっと疲れたかもしれないけど、まだもうひと頑張りくらいだったらいけるかも……つまり疲れてないのかな」


 自分から『疲れた』と言ったくせに、今度は『疲れてない』と主張する俺。おかしいだろ。コレットも怪訝そうに俺を見ている。


「あっ、そうだ! レオ様がよろしければ、私がいれてもよろしいですか?」
「……いれる??! 何を?! どこに?!」
「お茶を……カップに?」


 ……おいいぃぃっ!! コレットの妄想がヒドイなんて誰が言ったんだ! 俺の妄想の方が、少年並みだぞ! どんな下ネタだよ、声もひっくり返ったからな!


「お茶か……」
「レオ様、やっぱり私がお茶を入れるのはよくないでしょうか。でも私にはまだ侍女がいなくて……実は私、ハーブティーに詳しいんですよ。お疲れが取れるように、よく眠れるハーブティーを入れますね。あ、侍女が入れた方がよいなら、メイを呼んできましょうか」
「ちょっと待てぇぇっ!」


 いらないいらない。侍女いらない!
 ああ、なんで俺は四年前にコレットが首にリボンを巻いてきてくれた時に、ありがたく頂いておかなかったんだ。今になってこんなに苦労するなんて。

 どうする?

 コレットが期待しているのなら、そりゃ俺だって。

 ……そもそも、俺たちはもう結婚したんだぞ。陛下にもコレットの両親にも、抜かりなく挨拶を済ませた。何を躊躇することがあるんだ。誰が何と言おうと今日は初夜だ。変な駆け引きはいらない。コレットをドーンと押し倒せば、それでいいんだ!