それはさておき、このゲームにはもう一つ重要な要素があります。ゲームの題名にもなっている『ムーンライト』。これは、グランジュール王国に伝わる昔話に由来しています。

 一年に一度、夏至の夜にだけ花を咲かせる『ムーンライトフラワー』を一緒に見た恋人同士は、必ず結ばれるという伝説。
 この花をあらかじめ探しておいて、夏至の日の夜に殿下とヒロインをその場所に誘き出せばいいと思うんです! 私、すごい賢い!

 実はこのムーンライトフラワー。既にマティアス・ベルラントと組んで、調査を始めています。マティアスを覚えていますか? 私、コレット・リード公爵令嬢に密かに想いを寄せる、インテリ系貴族のマティアスです。

 想いを寄せられている事を知りながら彼を利用していいのか、ですって? 私を誰だと思っているの?

 悪役令嬢コレット・リードですわ!

 他人を自分の都合で振り回すのなんて、お手のものです。普段はあの悪魔に振り回されているので、少しくらい他人を振り回したって許されるんじゃないかと思うのですが……ダメですかね?

 マティアスは普段から書物ばかり読んでいますし、学園の図書館に篭りきりです。こういう調べ物は得意なんですよ!

 とは言え、マティアスとヒロインの出会いイベントは、この図書館。ヒロインが入学する年までには、マティアスも引き上げてもらわなければいけませんね。

 さて私はこれから、国王陛下に学園入学前のご挨拶をし、夜会用のドレスを殿下と一緒に選びに行く予定です。
 控えめに言って吐きそうな一日。

 夜会ではエリオット様にもお会いできるでしょうから、その時のことを妄想して耐え忍びます。