「レオ様、王妃様がご懐妊ですって!! すごいわ、びっくり! ほら、レオ様小さい時、ずっと弟か妹が欲しいって言ってたじゃないですか。二人で勝手に名前を考えたりしていましたよね! すごい年の差ですけど良かったですね、レオ様……」


 ……って、だからなんでそんな怪訝そうな顔……? しかも私、興奮しすぎてコレットbotになるのを忘れていたわ。おめでたい話には間違いないんだけど、私まで普通に喜んじゃったじゃないの。


「……コレット、母上の懐妊のことを知ってるって言ってなかったか?」
「え? 今、初めて聞きましたよ?」
「じゃあコレットが知ってたのは、誰の懐妊?」
「それは……私の口から言わせます? ひどいわ」


 私がそう言うと、レオ様がスイッチが切れたように止まります。あれ……大丈夫? レオ様以外はみんな動いてるんだけど。何かの呪い?

 レオ様の正面に回って、顔を見上げます。あ、少し動いた。
 私を見て……振り返って、王妃様とポーラ様を見て……また視線は私。それで、あららら……頭の上からどんどんと顔が青くなっていきますけど……もしかして、アバターに乗り移ってる最中?

 会場が笑顔と歓声に包まれる中、一人だけ真っ青になる呪いにかかったレオ様。急に私の腕をむんずとつかむと、人混みをかき分けて私を引っ張り、会場を出ようとします。


「レオ様、待って!」
「……」
「何で……青いの?」
「……ごめん、ちょっと来て」


 私の言葉に耳も貸さず、レオ様は力なく一言発して会場を出ます。足早に廊下を進み、待機している騎士が私たちに一礼するのも、全部素通り。

 やっとレオ様が足を止めたのは、レオ様の自室の前でした。扉を開けて中に通されます。


「座って」
「はい……」


 地を這うような低い声。ものすごい弱ってそうだけど……私、呪いの解き方知りませんよ?