「コレット!」


 ……そろそろ疲れてきたので、サッカーの実況風のナレーションは止めますね。


「殿下、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。さあ、陛下にご挨拶を」
「はい。陛下と王妃様へのご挨拶と、もうお一人ご挨拶しなければならない方がいらっしゃるんじゃなくて?」


 私がチョメ令嬢の方に目線を向けると、レオ様は目を丸くしてうろたえています。どちらにしても本日全て明るみに出るのですから、お名前くらいご紹介いただいてもいいんじゃないかしら。


「もう一人って……ポーラのこと?」


 ポーラ様と仰るのですね。ずっとチョメ令嬢と仮称で呼んでまいりましたが、これからはきちんとポーラ様とお呼びするように致します。あ、そうだ。一回ポーラ様に睨みをきかせておかなければ。……こんな遠くから睨んだけど、見える?


「ポーラは……とりあえず後で。まずは陛下に」


 そう言うとレオ様は、私に腕を差し出します。これが最後のエスコート。陛下にご挨拶を終えたら、試合再開かしら。


「国王陛下、王妃様。本日はお招きいただきありがとうございました。レオナルド殿下のお誕生日、お祝い申し上げます」
「コレット、そなたには王妃が倒れてから心配をかけてしまったな」
「私はもうすっかり元気だから、安心してね」


 国王陛下も王妃様も、そしてレオ様も、正装の上に王家の象徴である赤色のマントを羽織っていらっしゃいます。威厳のある国王様、穏やかで美しい王妃様。そして私の愛するレオ様。

 皆さん正装がとてもよくお似合いです。目に焼き付けておきますね。

 一礼をして、私は陛下の前から下がります。私が挨拶をしている時も、王妃様の後ろでしっかりと控えているポーラ様。もう、私よりも王家の一員のような堂々とした雰囲気が漂ってきます。

 さっきは睨んでしまってごめんなさい。レオ様とお子様を、よろしくお願いいたします。