「えっと……何から話せばいいかな。まずは、最近コレットと会う時間が取れなくて申し訳なかった。心配をかけたが母上もやっと体調がよくなってきて、陛下も公務に戻るから。これからは時間ができると思う」


 私は無言で頷き、笑顔を返します。


「その態度は……もしかしてアランから聞いた事を気にしてる?」
「アランから話は聞きましたが、特に気にしておりません」
「……懐妊のことも知っているのか?」
「……はい、存じております」


 よく存じております。週一のお通い妻、チョメ令嬢のことを。

 私は持ってきていたプレゼントの包みをレオ様に渡します。エアトンで作ったレオ様の誕生日プレゼントのハンカチと、赤ちゃん用の手ぶくろと帽子の入った包み。

「少し早いですが、殿下への誕生日のお祝いと、生まれてくるお子様への贈り物です」


 別に、爆発物や毒薬が入っているわけではないのでご安心くださいね。いくら悪役令嬢だからと言って、嫉妬に狂って心中したりは致しませんよ。ちゃんとレオ様の幸せを想って、心をこめて作ったものです。
 レオ様はその場で深々と頭を下げます。王太子ともあろうお方が、なぜただの悪役令嬢に頭を下げるのですか?


「こんな素敵なものを……ありがとう……そして、すまなかった! 本当は俺の家族の事なんだから、直接俺からコレットに言うべきだった。噂で聞くなんて、嫌な思いをしただろう。本当に申し訳なかった」


 ……二コリ。私は再び笑顔で返します。


「コレット……怒っているのか?」
「怒っているか……ですって? 私に怒る権利などございません。王家の皆様のご繁栄につながるならば、私にとっても吉報でございます」
「そうか……そう言ってくれると俺も救われる。確かに王家の血筋の事を考えれば、良い話でしかないと思う。ただ、国民の反応はそうもいかない。俺も、ちょっと恥ずかしくてしばらく外を歩けないかもしれないと思った……」