王宮に入り、控室をお借りして身支度をととのえます。
 アランによると王妃様はかなり容体が安定してきて、数日後に控えた誕生日パーティーにも参加できそうなご様子だそうです。

 お優しい王妃様。新年のご挨拶の時に目の前で倒れられてからずっと心配していたので、お元気になられたと聞いて一安心です。看病をなさっていた国王陛下も少しずつ公務に戻られているんだとか。

 そしていよいよ五カ月ぶりのレオ様との再会。少し前までは、会いたくて会いたくてたまらなかったレオ様。でも、今は会える嬉しさよりも、怖さの方が大きい。拒絶されたらどうしよう、冷たい目で見られたらどうしよう、側妃の方とご一緒にいらっしゃったらどうしよう。

 いいえ、コレット。どんな状況でも強くあるのが悪役令嬢よ。
 私の不安な気持ちがレオ様に伝わってしまったら、レオ様が思い切り断罪できないものね。

 部屋に通されて、レオ様の到着を待ちます。

 しばらくすると、バタバタという大きな足音が聞こえ、ノックもなしに部屋の扉が大きく開きました。


「……コレット!」


 五カ月ぶりのレオ様です。
 公務がよほどお忙しかったのか、少し顔が痩せてしまったような……? 目の下のクマもひどいです。レオ様の頬に触れたい気持ちを押さえて、私はその場でカーテシー。私に近づいて触れようとしたレオ様が驚いて、伸ばした手の動きを止めます。


「ご無沙汰しています、殿下」
「殿下って……コレット、エアトンで大変な目にあったと聞いた。大丈夫か? ケガはないか?」


 距離を狭めてくるレオ様から一歩引き、私は悪役令嬢らしい完璧な笑顔で返します。


「ご心配には及びません。アランが助けてくれましたので」


 私の態度に困惑したのか、二人の間にしばらく沈黙が流れます。レオ様が人払いをし、二人でテーブルに付きました。