馬車に荷物を急いで詰め込んだメイが戻って来て、私を支えて歩きます。きっと、寝ているところを叩き起こされたのよね。私のせいでごめんなさい。


「アンタ本当にバカね。いや、バカは私だわ。私が買い物行けば良かった。ごめん」
「いいの。全部私がフラフラしているから付け込まれるのね。悪役令嬢としての覚悟が、全然足りなかったわ」


 私がレオ様への未練タラタラだから、ディラン様に付け込まれたんだと思います。これからは、何があっても鉄の女になる。私の理想のイメージで言うと、スマートスピーカーとか、コレットbotみたいな感じで行くわ。

 悪役令嬢は、感情を見せたらダメなのよ。

 メイと共に王都に向けて馬車で出発し、後から馬車に追いついてきたアランと一緒に途中の街で宿を取ります。アランがなぜエアトンにいたのか、直接アランからは聞いていないけれど、多分全てレオ様にバレていたのね。

 私がディラン様と毎日編み物をしていたこともお茶会で側妃の噂を聞いたことも、レオ様は全てわかっていたのでしょう。

 レオ様から離れて気分転換をしたくてここまで来たのに、結局全てお見通しだったこの現実。

 ……もう、私は感情を殺します。 


「コレット」
「何かご用でしょうか」
「王都に戻ったら、その足で王宮行くから」
「……すみません、よく分かりません」
「ごめん、さすがにもう俺の手には負えないよ。直接喋った方がいいって、レオと」
「……」


 お休み、と言ってパタンとアランの部屋の扉が閉まります。メイに促されて私もベッドに入ります。夜中……と言っても、もう既に明け方近くかしら。ということは、今日レオ様と会うことになるのね。実に五カ月ぶりに。

 てっきり誕生日パーティーの場で婚約破棄される時に久しぶりの再会だと思っていたから、心の準備ができていないけれど、一体何を話せばいいの?

 ……いいえ、私はコレットbot。聞かれたことにしか答えないスマートスピーカー。

 余計な感情は排除して、レオ様が気持ちよく私を断罪できるよう、美しい悪役令嬢を演じてみせます。