編み物を始めてから二週間。
 私とメイは毎日のように、王都の毛糸店に通っています。

 エバンス様からは、『お互いに名前で呼び合いましょう』と提案を頂きましたが、私はどうしても『師匠』とお呼びしたくて断りました。初心者にこれだけ付き添って編み方を教えてくれるなんて、本当に親切な方。私にとっては、かけがえのない師匠です。

 ですが、レオ様の周りに女性の影が見えて悲しい思いをしている私が、男性と親密になるわけにはいきません。エバンス様はあくまでも、『師匠』。お会いする時は必ずメイも一緒に。そこはきちんと線をひかねばいけないと思っています。

 こうして編み物の練習を頑張りながらも、頭から離れないのはレオ様の誕生日パーティーのことです。残り二週間に迫っています。

 もし私がその場で断罪されたら渡せないかもしれないけれど、レオ様へのお誕生日プレゼントは準備しておきたいと思っています。プレゼントを何にしようかとメイに相談したら、今度こそ自分の首にリボンを巻いて差し出せ、ですって。

 『プレゼントは私です!』とレオ様に言いながら首にリボンを巻いたのは、私がまだ十六歳の頃。何とあれから、四年もの月日が経ったようです。

 あの時レオ様は『二年後まで大事にとっておく』と言いました。

 ……レオ様。二年後というのは、とっくに過ぎ去りましたよ。


「コレット、時々そうやって悲しそうにするのはなぜ? 編み物もすごく急いでいるみたいだけど……何か事情があるの?」
「師匠、申し訳ありません。少し不安なことがあって。でも大丈夫です」


 師匠が、悲しそうな目を……しているかどうかは分からないけれど、私のことをじっと見ています。うつむいた私の顔がよく見えるように、ニットでできたヘアターバンをスポンと頭からはめてくれます。

 ……これ、前髪立ち上がったまま、跡つきません?