「その編み物の貴公子様って、どなたなの?」
「コレット様、よろしければ今日にでもご紹介いたしますわ。いつも馴染みの毛糸店に入り浸っておりますの」


 なんという幸運! 早速編み物の師匠に出会うことができそうです。レオ様のことは一旦忘れて、編み物の世界にのめりこみたい……!

 ウェンディ様に連れられてやって来たのは、王都のはずれにある小さなお店。シンプルな看板がかかっているそのお店のショーウィンドウには、淡い色合いのニット製品が数多く飾られています。

 赤ちゃんのお洋服、おくるみ、手ぶくろ……。ベビー用品のお店なのかしら。もしそうなら、私の希望どおりだわ。ルイーズのために、残り一か月でできるだけのことをしてあげたいの。

 店に入ると、美しいニットの上着を羽織った背の高い……いえ、ちょっとヒョロっとした感じの男性の後ろ姿。きっとあの方が、編み物の貴公子様ね!


「初めまして、私コレット・リードと申します。編み物がお上手と聞いて、ぜひ一度お話をと思いまして……」


 貴公子が私の声に振り返ります。きっとキラキラした王子様みたいなお方なのね。楽しみだわ。どんなお顔……


「えっ……あなたが、編み物の貴公子様?」
「はい、皆さま私の事をそう呼ばれますが……」


 驚いた。

 ……いいえ、私の勝手な偏見がいけないのよ。編み物が好きだというから、ほんわかした可愛らしい雰囲気のキラキラ男性かと勘違いしたの。

 まさかこんなに細い、「3」の形の目をしているだなんて。