知らないわよね、当然よ。普通のご令嬢がそんな薬の入手方法を知っているわけがないわ。だからこそ媚薬を買った人をたどれば、レオ様に媚薬を盛ったお相手は簡単に足がつくと思うの。メイが知らないとなると、他に媚薬の入手ルートを知っている人なんて思い浮かばないわね、どうしましょう。


「拗らせた人って本当に面倒ね。想像力が働きすぎておかしな方向に行ってるわよ。マンガの読みすぎじゃないの? それにね、相手に合わせて気持ちを振り回される人生なんて辛いだけよ」
「振り回される人生って……どういうこと?」
「人に振り回されない、自立した女性は魅力的ってことよ。レオからの連絡がないからって、落ち込んだり卑屈になってちゃダメ。アンタはアンタのやりたい事をやって自分を磨くの。そうすれば男なんて勝手について来るものよ」
「……すごく良い言葉だけど、メイが言うと本当に説得力がないのよ」


 掃除のために私の部屋に来たはずのメイは、相変わらず私のフカフカのベッドの上でゴロゴロしながら言います。主人に対して礼儀もへったくれもない失礼な侍女だけど、メイの言葉を聞いて少し気持ちが楽になったかも。

 私は私のやりたい事をやって、自分を磨く。レオ様と会えないからといってイチイチ卑屈になっていたら、王太子妃なんて務まるわけがないわね。しっかりしなきゃ!

 それに私、やりたい事を挙げ始めればたくさんあるわ。

 ルイーズのためにたくさんお洋服や絵本も作ってあげたい。編み物に挑戦してみるのもいいかも。それに、今の私には夢のまた夢かもしれないけれど、いつか自分の子どもが生まれた時にも、手作りのものをたくさんプレゼントしてあげたいの。


「メイありがとう。私、自分の軸をきちんと持って、感情に振り回されないように自立するわ」
「そうして。あ、たまにはお茶会にでも行って来たら? 招待状来てたの忘れてた。はい!」


 どこに隠し持っていたのか、一通の封筒を私の方にポイっと投げてきます。そうね、たまには他のご令嬢ともお茶を飲みながらおしゃべりして、気分転換をしてみるのもいいわね。