「まさか、公衆の面前で断罪されて婚約破棄……?」

 乙女ゲーム『ムーンライト・プリンセス』のシナリオでは、どのルートに入っても悲劇的な最後を遂げるはずだった、悪役令嬢コレット・リード。

 そんな悲劇を起こさないために、攻略対象五人で何度も話し合いを重ねて、全攻略対象のルートを潰したはず。

 ……もしや、ここへ来てゲームの強制力が、私の悲劇的な結末を回収しようとしているの? 来月のレオ様の誕生日パーティーで、みんなの前で断罪されるの?



『コレット・リード! 今日この場で、お前との婚約破棄を宣言する!』
『……おっしゃる意味が分かりませんわ。一体私が何をしたと言うのです?』
『お前はこの男爵令嬢××(チョメチョメ)に嫉妬し、イジメたそうだな!』
『全く身に覚えがございません。具体的に私が何をしたと言うのか、教えてくださいますか?』
『この無礼者め! 白を切る気か!』

 ……。

 ……婚約破棄の場面、いくらでも想像できるわ。

 レオ様とは上手くいっていると思っていたのに、この四カ月で一体何があったの?

 私に色気がないから?
 キスの時に恥ずかしくてモジモジしたから?
 私が誰かをイジメてた……とか?
 私以外の、運命の女性に出会ったとか?
 運命の女性が、チョメチョメ男爵令嬢?

 いえいえ、もしかしたら原因は私じゃなくて、レオ様の方にあるのかも。何か事件に巻き込まれてしまったとかね。

 よくあるお話でしょ、レオ様に恋焦がれるどこぞの貴族のご令嬢が、こっそりレオ様に媚薬を盛っちゃって(ピー)とか。


「いやあぁぁっ!……メイ!」
「何よ、また妄想の世界にどっぷり入ってたわよ、アンタ」
「媚薬って、簡単に手に入るの?」
「は? 知らないわよ!」