「大体あんたが、たかがキスの事すら『待ち合わせ』とか言っちゃってさ。そうやってカマトトぶるから良くないのよ。レオだって、もっと色気のある女がいたらそっちになびいちゃうわよ」
「……レオ様はお仕事が忙しいだけなのよ! お色気女性になびいたりなんて、レオ様に限って有り得ないわ」
「分かんないわよ。だって、適齢期を超えた婚約者同士がこんなに長い間会えないなんておかしいもの。きっと浮気よ、浮気」


 それは私も薄々と感じていました。前回レオ様に会ったのは、何と四カ月も前! まだリンゼイがルイーズを出産する前のお話でしたから。

 時々メモ程度のお手紙や贈り物は送られてくるけれど、普通は直接会いたいとか思わないものかしら?

 ……私はすごく会いたいのに。


「まあまあ、来月はレオの誕生日パーティーでしょ。そこでは必ず会えるんだから我慢よ。それと、少しは色気でも出してみたら? まあ、アンタには無理だろうけど」


 学園を卒業してからは、外遊も多いレオ様。誕生日パーティーには、きっと外国からもたくさんお客様をお呼びするのでしょうね。私だってレオ様の婚約者としてお客様へのご挨拶が必要でしょうに、誰がいらっしゃるのかも全く知らされていないわ。

 ……まさか。

 嫌な予感がしてきました。もしかして私が悪役令嬢だから、どんなに頑張ってもレオ様とは結婚できない運命……っていうことはないわよね?

 卒業間際の祖父の死と、喪に服した一年、その後のレオ様と会えない四カ月もの空白、つれない手紙、形式ばかりの贈り物。明らかに開いていく、私とレオ様の距離。

 そんな中で開催される誕生日パーティーなんて、タイミングが良すぎませんか? 私の頭の中によぎるのは、悪役令嬢ならば必ず一度は経験するあの有名な場面……


「まさか、公衆の面前で断罪されて婚約破棄……?」