「レオ様、ご卒業おめでとうございます」

 今日の卒業パーティーは皆さん少しラフな格好で、色々なデザインや色の装いが素敵です。レオ様もブラックの上下に、差し色のグリーンがさわやかですね。


「ありがとう。コレットはあと二年だな、待ってるからな」


 頭をポンポンと撫でられた私は、満面の笑みで返します。あと二年経ったら……結婚よね? レオ様にふさわしい王太子妃になれるよう、頑張ってお勉強します!

 レオ様と一緒に、卒業祝いの御挨拶にいらっしゃる方とお話ししていると、向こうの方にエリオット様が見えました。あ、アランやジョージもいますね。
 エリオット様の側には……まあ、リンゼイが号泣しているじゃないの。エリオット様のご卒業が寂しいのね。エリオット様も、そこは大判タオルじゃなくてハンカチを渡すところですよ。

 エリオット様はリンゼイという婚約者を得て、アランは夢だった騎士団へ入団。ジョージは文官試験に合格して、晴れて春からは王宮で国王陛下のためにお勤めするようです。
 マティアスはあの一件のあと、隣国に留学。その後は会えていませんが、時々手紙のやり取りをしていますよ。

 円卓を囲んでワイワイ喧嘩していた頃が嘘のようです。皆さまそれぞれの道に進んで、夢いっぱいですね。


「コレット。この後時間あるか? 見せたいものがある」
「はい、大丈夫です。私もレオ様にお渡ししたいものがあるので、ちょうど良かったです」


 パーティの後で王宮へ移動しますが、馬車が止まったのはなぜか裏門の前です。この場所は、私にとっても思い入れのある場所です。子供の頃は裏門を入ったところにある畑の周りで使用人たちとたくさん遊びました。大きくなってからも、オラオラだったレオ様に幾度となく呼び出され、裏門からレオ様のところに馳せ参じたりもしました。

 そして何より、メイ様とレオ様が婚約すると誤解した私が、レオ様にお別れを告げた場所でもあります。あの時の身を切られるような気持ちを思い出すと、今でも切なくなってしまいますね。